詭弁に寄りかかり、本心を曲げ、あるいは本心に打ち倒されながら、闘いのうちに立ち直ったことも幾たびだっただろう。曖昧な理屈を立てたあとや、自分かわいさから一見理屈に合った狡猾な論法を用いたあとに、憤った本心から「ずるいやつ、惨めなやつ」と耳にささやかれるのを聞いたことも幾たびだっただろう。頑迷な私の思想が、人間として明らかな義務のもとに痙攣的なうめきを発したことも、幾たびだっただろう。
 本心の底など見えはしない。いったい私の本心とは何であり、何ともわからないものの底に何があったというのだろう。

  • 2009.04.30 Thursday
 生を終わるということは簡単なことだ。そのためには別に区切りの朝を必要としない。

 大多数の人びとはいかに強いられても、自分の欲する以上に早く足を運びはしない。彼らはものを見、また聞くけれども、それを欲しない。巌のように静まり返った人びとは、常住起臥し、飲み、食っている。ただ、その維持のために戦々兢々としている。それを破壊される危惧から生じる極度におびえた感情は、炎となって体内に燃え、そこから煙のような憤怒が吹き出てくる。
「何をしにここにきたんだ? 勝手にやれ。最後はどうせ決まっている。俺たちの知ったことではない」
 かくして彼らは墓のように静かに佇立する。反徒は彼らの反目を照射する墓列の前で死の苦しみを受ける。理想が闘いを行なうのは、常に自分を命の危険に曝す、時期尚早の場所である。人びとの魂の上に影が降りているのを見て、それを払うことができないのは、物思う人間の深い痛心の一つだろう。しかし絶望するのは誤っている。人びとの不壊の魂はかならず覚醒する。
  運命を愛し
  成就のかわりに破滅を甘受せよ
  拒絶する者を恨まず
  かえって彼らを弁護しながら
  彼らに奉仕せよ
  彼らの寛大から見捨てられてあることに同意せよ
  彼らの忘恩に対して不屈であり
  柔和であれ


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   人はこれを言いつくすことができない』

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     ・・・・・・・・・・
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―竹内銃一郎(劇作家)―

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