恐怖と諦念

 栄達を拝し、手段選ばぬ成功を尊崇するような、放恣きわまる私利私欲と金力のみに基礎をおく一連の社会組織の前にあって、人間的正義の力がいかに無力であるかを私はとくと思い知らされ、生きる気力を失うほどに慄然とさせられた。私の芸術は、その恐怖と静かな諦念から出発した。