週言
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2009.11.21 Saturday
故郷
私は、九州は熊本のある町に生まれたのだが、その町の記憶は一つも残っていない。父と別れた母がいろいろな職に従事して、諸処転々としたからである。私に故郷とする場所はない。見方を明るくすれば、日本の処々方々が私の故郷とも言える。菜の花が一面に咲いて陽炎の立つ畑だとか、雪の降り積もる岡は真っ白なのに海はますます蒼くなる冬景色だとか、都会の一隅のドブ臭い路地の夕暮れだとか、それらのものが同時に私の中でたがいに入り混じっているというわけだ。私はいつでも、これら任意の風景を思い出すことができる。
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