〈ロマン〉

 たとえどれほど学者や芸術家が、人生の理解を求めて自由な深い思考をしようと、俗世の愚かな空騒ぎに対して全力で軽蔑しようと、人びとはこの不可解な人生を熱烈に愛し、空騒ぎを繰り返す。学者や芸術家がたえず思索し考察するのは、同類の思索家を求める連帯欲からに過ぎない。現世に対する彼らの実効力はいっさいないのである。学問と芸術のロマンとは、そのことである。
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