JUGEMテーマ:読書
 

人間が築き上げてきた文明生活において、家庭を核にする集落や教育機関で叩き込まれてきた基礎教養的な、あるいは道徳的な先入観は強大なもので、その偏見は人間の有用な発達の過程(それがなければ人間は発達しなかった!)に深く沈着して、削り落とすことができなくなってしまったシミである。さらにそれは、人類のエキスと言ってもよい群集心理の力によって固持されていて、これと戦うことはとてつもなく困難である。しかし、戦わないかぎり、しだいに翳ってくる闇中に曙光を求め、沈殿物にまみれた濁水を浚って清澄を求める希望と覇気は、たちまち消失する。

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言葉が魔術であることに対する信頼だけは、私の中で揺らいだことがない。生活の基盤は常にそこにある。適切な言葉によって人を喜ばせることもできれば、また不適切なそれによって絶望におとしいれることもできる。体系的な言葉によって知識を伝達することもできるし、また情動的な言葉によって感動を湧き立たせたり、倫理的な言葉によって判断や決意を左右したりすることもできる。言葉は人の心に普遍の愛と恐怖と理知を呼び起こすので、よきにつけ悪しきにつけ、人間として在ることの意味を悟らせ、人がたがいに影響し合う永遠の手段となる。ただ私は、魔術の対象に全面信頼を置いてはいない。言葉は魔術ではあっても、語り手と聞き手のあいだに真の心のつながりがないかぎり、思いは凍り、口は萎えるので、有効な施術のすべがない。

したがって私は、学友や生涯の知己よりもさらによく自分を理解してくれる少数の者を相手に語る。学友や知己よりもはるかに進んで、私と完全に共鳴する思考や感情を持った一握りの人間のみを対象に、もっぱらその少数者に向けて語る。思いを託した私の言葉が、あてもなく放り出されたというのに、その雑然とした言葉の中から、私の本性が分割された一部をまちがいなく見つけ出し、それと自分の内奥の言葉を結び合わせることによって強く確実に生きはじめるような、私の存在の意義を喜びの中に再認識させてくれる者とのみ語るのである。

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   『すべてのことは人をうみ疲れさせる
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1  笑い疲れているが、あしたも笑うであろうということ。
     ・・・・・・・・・・
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―竹内銃一郎(劇作家)―

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