• 2011.09.12 Monday
JUGEMテーマ:読書
 

 顔容を含む美しい肉体をあえて忘却するあらゆる種類の禁欲主義は、人間に対する最も唾棄すべき冒瀆だと私は信じている。私は高い精神を養う美しい(それは文字どおり美しいという意味であって、生理的に健康なという意味ではない)肉体の意義を確信する。高雅な精神を包摂した肉体の美的完成は、尊崇に値する。肉体の美が増すと、精神の美も増してゆくのが必然だと私には思われる。したがって、精神の貧弱な美男・美女は存在しえない。善男・善女はつねに美しい。総合的な肉体の美を獲得してはじめて、相応の精神へ昇華すると観るのが正しいだろう。逆もまた真。価値高いものへ昇華してゆく精神を獲得する途上で、人は美しくなっていく。

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 福島県の原子炉が壊滅状態にある。原子力発電所というものが日本国にとって何か本質的利益を意味すると信じて、専門家も素人もこの潜在的な生命の危機を我慢しているようだが、原子炉にかぎらず、そもそも近代産業とは下劣な科学的理想と拝金思想に奉仕して国民を疲弊しつくす以外に何の取り得もないものだ、とだれかが教えたら、はたして彼らは堪忍袋の緒を切るだろうか。これ見よと切れるほどの緒を持っていたとしたら、彼らの子孫にはまだ復古の美しい未来がある。

 地震、津波、噴火、豪雨……彼らは何ごとにも驚かない。たとえ墓に眠っている死者の全部がよみがえって、人里めざしてどんどん歩いてきても、度し難い鈍感な彼らを呼び覚ましはしないだろう。怪しみ、恐れ、噂をし合い、駆け回りはするだろうが、それから? 一週間か二週間もたてば、農民はふたたび野良に出、漁民は海に、大工は屋根に、商人は金に就き、よみがえった死者のことなどケロリと忘れてしまうだろう。どのように人生の危機や不可思議が目の前に提示されようとも、彼らは相変わらずの鈍感ぶりをつづける。

それもこれも、どんな国の民も考えることといえば、財だけだということに起因している。近代の産業主となんら変わらない。彼らに知的な生き方など、ありえない。彼らは一般教養と呼ぶべきものさえほとんど持たない。財を得たものは必死に財に執着する。ほとんどの民は、生活の糧である財を稼ぐための仕事以外のことで心を労する暇もないし、そんな気持ちも起こらない。彼らにとって生活の糧とは、文字どおり『食う』ことだけを意味しているのだから。つまり、そういう彼らの前にあって、これまでなされたり、暗示されたり、思いつかれたりしてきたことは、どれ一つとして役に立たないということだ。

 これらの事実が教える真理は、何かが確かに始められる前には、まず心がその習慣から引き上げられなければならない、ということだ。私はもともと何かを堪忍した覚えもないし、したがって堪忍を閉じこめる袋も緒も所持していない。このどうでもいい『国』や『世界』の未来になど、遠の昔に関心は失せている。産業社会に打擲(ちょうちゃく)されるのは、そこに生まれ合わせた罪と、そこをぬくぬくと生きのびた罰だ。産業界の神たちの吐き出した毒素をこってりといただきながら、残余の青春を味わって死のうと思う。むろん、子孫たちの世界を考えるゆとりはない。

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