愛国者

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 過去のあらゆる時代がそうであったように、これから先いつまでも、人間は同胞を支配したいと願い、地上は老若の血で黒く染められるだろう。『祖国』という聞こえのいい美しい言葉はつねに虚妄であり、呪詛であった。『文明』という見かけ倒しの概念とグルになったその言葉は、現代の野蛮主義の隠れ蓑の役割を担い、上品な衣をまといながら平然と、貪欲のかぎりを尽くしてきた。真の愛国者がほんとうにこれまで存在したとするなら、それは大地であれ、机上であれ、ひたすら、それをつぶさに耕し、種を蒔き、自分の理想の畝のことしか知らずに死んでいった人びとのことを指すだろう。