2015.01.19 Monday
野球
野球はオール・オア・ナッシング。プロになるか、ならないかだ。公園の三角ベースではない。偏差値50の甲子園が到達点ではないのだ。その厳しさ、挫折、希望、実現が描かれないかぎり、私は野球ものの鑑賞をためらう。
なんといっても野球ものの最高峰は、挫折と夢の実現が交錯する『くたばれ! ヤンキース』だろう。ある一流の野球選手がある事情から(事情というのは不可抗力なものだ)プロ野球への道を絶たれるが、中年に至っても夢を捨てきれない。そこへ悪魔が現れ、愛する妻との生活と引き替えに夢を叶えてやる。からだまで若返らせて。当然のこと、彼は大活躍する。しかし、夢が叶ったとたん、いかに妻を愛していたかを思い知り、人間の幸福の本質を悟る。で、悪魔と交渉し……。あとは言わずもがなだろう。
現在書き継いでいる『愛河』の随所に野球が出てくる。野球に対する愛、途絶、プロへの道をあきらめきれない苦しみと、悲しみ、怠惰な放棄、自棄の果ての絶望、といったものだ。野球が私にとってすべてだったころを、永遠に忘れない。それを思い起こさせ、泣かせる小説を読みたい。ちばてつやの野球漫画『誓いの魔球』のような。
不可抗力にあらがい、敗れ、流す涙こそスポーツの根源だ。
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