JUGEMテーマ:読書

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 今回は高校時代の作文です。
 かなりのできですが、まだまだです。これをもっと砕いた表現にして、後年、牛巻坂を書きました。
  彼女は反抗期の子供を持つ母親の現実に初めて直面して、どうしていいのかわからなかった。これまでずっと親子の生活を維持するために、工場とか飯場といった身に合わない荒くれた世界で働きづめできたので、それ以外の苦労を考えるのが面倒で、子供の巻き起こす厄介ごとにぶつかるたびに、なんとかそれを避けるようにして生きてきた。これまではそれでだいじょうぶだった。だから、いま目の前の危機が彼女に与えた印象は、ふだんの生活のために何ごともなく往き来していた道が、ある日とつぜん、大雨のせいで水浸しになって動きがとれなくなり、それどころか、ふと足もとを見ると、どこからか押し寄せてきた濁流がいまにも自分をさらっていこうとしているのに気づいたような感じだった。
『あのぎらぎらした野蛮な目はいったい何なの! 親に向かって利く口なの! 皮肉と悪意でいっぱいじゃないの! 子は親に従わなくてはいけないのよ。これはどうしてもカタをつけなくちゃ。この子に何が起きたのか知らないけど、何が起こったにせよ、どうにかしなくちゃいけない。わが子に遠慮してとんでもないことになったら、私自身も共倒れだし、世間さまにも申し訳が立たない』
 しかし、以前は彼女にとって千鈞(せんきん)の重さを持っていたそういう理屈も、いまはその力を失ってしまっていた。彼女は、自分がクソッたれ呼ばわりまでされながら、どうして後ろめたい気持ちになるのかよくわかっていた。
 ―でも、あの怪しげな電話の主を突きとめなくちゃ。隠しごとをしているとき、人間というのは身近な人間のいたらなさ加減を責め、クソッたれ呼ばわりするのだ。秘密の追求を避けるために、馬鹿とかクソッたれという言葉だけは、いちばん身近な人間に気前よく献上するのだ。
 

次の文章、わかりますか? 私の高三のときの日記です。私にもわかりません。詐欺師の時代の文章です。後年、これに似た文章を諸所に見かけるにつれ(入試問題はほとんどこれです)、この世は詐欺師にあふれていることを知りました。詐欺師とは自分の書いた文章の意味がわからない人のことです。文芸の分野にもあふれています。いまの私は詐欺師でありません。
 
無作為の情熱的な体験を、言葉に帰納できる必然は望めない。感覚体となるための禊を終えた言葉は、言語世界に立ち返ったとき、すでに純化された言葉をさらに密に組織し直す高音高圧のマグマとなっている。純一な没我体験の高圧が結晶度の高い言葉を変成するのである。表現する者にとって、言葉とは、変成された結晶体である。それは観賞物ではなく、ダイヤのごとく人間世界を裁断する万能の凶器である。体験とは言語ために仮構された建造物にすぎないとするなら、そも、体験とは何であろうか。純化という名の成り上がりの言葉に身を捧げる下級奴隷だろうか。
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     ・・・・・・・・・・
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―竹内銃一郎(劇作家)―

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