私がいちばん愛することは、机や寝床にいて夢想することだ。
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 彼らからすれば、川田という男は勉強熱心な学生で、一意専心、単純に立身を望んでいる者としか見えなかっただろう。そんなふうに見えるのは、ひとえに、勉強家の集団に関わるときの私の気組みのせいだった。
 つまり私の考えは煎じ詰めると、ただ一つの方針に集約された。何ごとによらず、最終的に賞賛と感嘆を得ようとすること。たとえば、一つの学科のできを驚嘆されると、その驚嘆を持続させ、模範とされるまで勉強する。そしてその目的を達してしまうと、ほかの学科に手を出してみる。これも征服しようとするが、できないとわかると撤退して、先の驚嘆された学科にいろいろな方向から磨きをかける。まるで、コースを想定したバットスィングを繰り返しながら、一つをきわめ、一つを不得意のまま捨てていくように―私は永遠に野球選手だった。
 勉強は立身の道具ではなく、受験というトーナメントのための楽しい鍛錬ゲームだった。その証拠に、私は学歴を立身に役立てたことは一度もなく、こうして老年に至って社会の野末をうろついている。
 その受験歴や学歴をビデオに撮ってもらった。勉強史の真摯な部分だけを語ったつもりだったが、作成者が危惧した。
 異常すぎる、ホラと受け取られるのではないか。
 私は言った。
 そのほうがいい。背負う十字架が一つ増える。私の人生などマグレの連続だったし、マグレ以外の部分を語り足せば、もっと異常で目も当てられない。自分でさえ信じられない。それを語って他人に信じてもらおうなど、もってのほかだ。

 感情にまかせて生きると、悪しき破天荒の人生になる。だれも信じない。私は信じてもらえない人生を送ってきた。今度は野球かい、今度は女かい、と何度も言われた。虚言癖のレッテルを貼られたこともあった。つまり、目障りな存在でありつづけた。気ままに生きて、何も成就できなかった人間に、理解という鎮魂はいらない。罰せられるだけでいい。ホラ吹きという長期刑が見合っている。作成者はそれが口惜しいようだが、私を愛しているからだろう。このような男が愛されることこそ、最も信じられない奇跡である。

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