野辺地中学校

 
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この校舎に集う勉強家たちも、あの色街小路の刺身たちも、だれも、かれも、これまで出会ってきたすべての人びとが、みんな消えていく。野辺地中学校の大秀才、かつ親友だった山田三樹夫が白血病で死んだとき、私はそう思った。消してはならない、書き残そう、と決意したのもそのときだった。人の一生は、何かの達成ではなく、達成の途上の混みいったいろどりの美という尺度で測ってもいいとわかった。しかしそのとき、山田三樹夫の声が聞こえた。
「哀れな川田くん! きみは知らない、この広い世間で自分がどれほど取るに足らない人間かを! 人生にいろどりなんかないんだよ。業績しかないんだ」
聞こえたとたんに、床板の一枚一枚が、窓の一つ一つが、階段の一段一段が、物音の一つ一つが、私の心にこの上ない幸福な気分を呼び起こした。

ブルースノウ

 
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