私は彼らに心が惹かれるのを感じることがあった。彼らには美点があった。善良さ―何の作為もない素朴な善良さだった。同時に彼らの退屈さにも惹かれていた。生計と、蓄財と、子育てと、近所の行事以外に関心のない彼らも、食卓を囲むたびに人生訓を吐いて面目を施している家長も、世の中のことと勉強のことしか言わない長男の秀才も退屈だった。しかし、私のその日暮らしに比べると、この麻薬のような退屈さはとてつもない魅力だった。このまま彼らの中に埋もれてもいいとさえ思った。日常に抱きしめられる感覚。大勢の人の人生を踏襲する幸福に身をゆだねるということは、たしかにある意味で倫理への敗北かもしれない。でもそれは、こと芸術作品でないかぎり、多くの勝利よりもはるかによい敗北なのだ。

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  エピグラフは、旧約聖書の「伝道の書」。
   『すべてのことは人をうみ疲れさせる
   人はこれを言いつくすことができない』

1  笑い疲れているが、あしたも笑うであろうということ。
     ・・・・・・・・・・
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世界の中心に向かって最短距離を疾走する彼の言葉達は無謀なヘッドスライディングを必要としないのである。
―竹内銃一郎(劇作家)―

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