純潔

 純潔は人を完全な状態に導く、と思うのは誤りである。肉の交歓のない愛情は悲哀の温床になる。純潔を旨とするとき、人は無差別な快楽の汚辱を忘れるが、無垢な情欲が愛する特定の肉体に厳しく存在することも忘れる。
コメント

ジイドの「狭き門」が、まさにこれがテーマだったな、と思い出しました。宗教上の純潔主義から、愛する男を受け入れられない、果ては自殺してしまう。というお話。『無垢な情愛』は、ついには特定の異性ではなく、自分にむけられてしまう。
 「狭き門」は、それほど面白い作品ではなかったが、純潔を守るため、死を選んだ女の自己愛の究極の形を描いたのかもしれない。残されたものの虚無感が作品の最後の数行に見事に表現されていたと思う。

  • saku
  • 2009/07/18 17:06
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