しばらく麻雀を打っていない。嫌いなゲームだからではない。流行の推移もあってか、とんと麻雀打ちにめぐり合わず、勝負相手がいないのである。この四、五年、何人かの人と「打とう」と約束した予定も、すべてお流れとなった。相手の不思議な都合のせいである。

卓についた瞬間のあの高揚を思い浮かべる。ゲームが始まると、それまでの日々虚ろだった気分がたちまちうそのように消えていく。どうして長くこの罪のない楽しみから遠ざかっていたのだろうと、後悔にも似たものを覚える。

勝負の運不運などというが、それはむしろ何かより深遠な摂理の現われではあるまいか。摂理に気づくのは冷静な見者(けんじゃ)であって、当の勝負者がそれに気づくことはなく、ただ摂理などないと信じる気組みを持ちながら、運不運を否定する渦中にいる。

寺田康男は中三のときに、大人たちと麻雀を打っていた。鬼気迫るあの背中が忘れられない。私が麻雀を打つようになったのは、それから三年も経った高三の夏である。そして打ちながら思い浮かべるのは、決まって寺田康男の凛とした背中だった。運不運を否定するあの背中だった。

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