次の文章、わかりますか? 私の高三のときの日記です。私にもわかりません。詐欺師の時代の文章です。後年、これに似た文章を諸所に見かけるにつれ(入試問題はほとんどこれです)、この世は詐欺師にあふれていることを知りました。詐欺師とは自分の書いた文章の意味がわからない人のことです。文芸の分野にもあふれています。いまの私は詐欺師でありません。
 
無作為の情熱的な体験を、言葉に帰納できる必然は望めない。感覚体となるための禊を終えた言葉は、言語世界に立ち返ったとき、すでに純化された言葉をさらに密に組織し直す高音高圧のマグマとなっている。純一な没我体験の高圧が結晶度の高い言葉を変成するのである。表現する者にとって、言葉とは、変成された結晶体である。それは観賞物ではなく、ダイヤのごとく人間世界を裁断する万能の凶器である。体験とは言語ために仮構された建造物にすぎないとするなら、そも、体験とは何であろうか。純化という名の成り上がりの言葉に身を捧げる下級奴隷だろうか。
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