• 2008.04.06 Sunday
 私はよく痰を道端や駅の線路上に吐く。マナーとして美しくないことは、もちろん知っている。しかし私は、口の中に痰をためておく不快感に耐えられないのである。そこで、いわば意識下的な瞬間の決断をして、痰を吐き飛ばすのである。その決断をだれも美しく立派だと思ってくれないことは、むろん覚悟の上である。

《断想》

・真の民主主義というものは存在しないに決まっている。民を主にする国家は国家と呼ばない。国家は民を牛耳る人びとを主にめぐるのである。もし民のわがままを許容するようなユートピアを存在させ得るとするなら、権力者が権力にものを言わせて民の意向を蹂躙せずに、民の意見の中で正しいと思われる考え方だけは考慮して採り上げてやるという温情が必要となるだろう。考えられない善政である。考えるだけ時間の無駄だ。民が身につけなければならないのは、深く明るい諦念である。

・日本の文化は中国はじめすべての外国文化を模倣したなれの果てだが、ひどく遅れていたのだから模倣したのはきわめて自然な行為だった。ただ、他人であろうとして懸命に模倣しながら努力を重ねてきたのだけれども、慣れないことを無理して真似たせいで、ひどく疲れ切ってしまった。悲惨なことに、もとの自分も忘れてしまった。

・一般論をなぞれば、地球は科学技術の発達のせいで日々小さくなってきている。トインビーのいわゆる『距離の空無化』である。それは交通機関の発達というより、テレコミュニケーションのせいだ。情報が即時で、世界中に距離がなくなり、共通世界が成立しているのである。人口問題・食糧問題・公害問題等々、地球に住むすべての人間は、地球市民として一つの運命共同体を形成せざるを得ないところまできている。
どこかの脅迫好みの文化人の口から聞いたことがある意見だろう。そこまで国ぐるみの均一化を図る必要はない。いくらインターナショナリズムがよい、共通化がよいといっても、皮膚の色と風土までは変えられないのだ。地球市民などと言わずに、日本市民といいつづけていればいい。皆がどれほど叫ぼうと自分は決して同調しないよ、という誇りさえあれば、世界に共通する腕と頭で地球に参加できる。それこそ、可能な共通化である。

・作品がすぐれていればそれを生み出した肉体や行動がどんなに醜くてもかまわない、という考え方があるが、また現実にそういう場合もまれに見かけるが、十中八九よい作品は美しい肉体と行動から生み出されると、私は確信している。
・専門の匂いのしない人間は素敵だ。学究者の尖鋭な倨傲、高い身分にまつわる人を寄せつけない威厳、宗教家をてらった悲しげな憂鬱、エセ芸術家にありがちな自己中心的な気取り、そういったもののない人間の存在には『位』とでも言うべきものが常にあり、気品があり、人としての位置が高く感じられる。つまり、一個の確たる人間存在のみが意識されるという人格を髣髴とさせる。彼は、普通の人ではない。


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     ・・・・・・・・・・
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